奥州での長い長い冬が終わり、ようやく春がここ、伊達政宗のおさめる奥州にやってきた。


「いー天気ー!」


空は清々しいほどの青空、雲一つない快晴で太陽の力でポカポカする。こんな日はお散歩に出かける人も多いから小さな茶屋を営むの家にとって絶好の商売日和だ。

「今日もがんばらなきゃ!」
「何をがんばるんだ?girl?」
「・・・?がーる?」

聞き慣れない言語が聞こえて恐る恐る振り返った。そこには右目に眼帯をつけ、グレーの着流しを着た男が立っていた。(お侍さま・・・?だよね、刀持ってるし、にしてもカッコイイなあ・・・細いし背高いし)初めて間近に見る侍に多少の恐怖心はあるもののそれでも好奇心のほうが勝った。
(や、見れば見るほどカッコイイ・・・!)

「Hey、girl俺に何か付いてるか?」
「は、え?あ、いえ!何も付いてないです!」

すみません!ごめんなさい!と言いながら頭をペコペコ下げた。
(馬鹿だ!私!!)

「団子一つもらおうか」
「あ、はい!お待ち下さい!」

よし!今日初お客様だ!張り切っていこう!奥に引っ込んでお茶を入れた湯呑みと店自慢のタレに付けたみたらし団子をお盆に載せてお侍様のお客様に持っていく。

「お待たせしましたーっ」
「Thank you」

ってかさっきから何語しゃべってるんだろ?南蛮語ってやつなのかな、コレ。じーっとお侍様を見ていると食べ終わって湯呑みのお茶を啜っているお侍様と目があった。

「そんなに俺が気になるのか?」
「い、え、すみません!」

条件反射で謝ったらお侍様は笑った。

「OK,OK,そんなに俺を知りたいのか」
「あ、いや、そんな」
「俺の名前を言っていなかったな?」
「あ、はい」

この展開に付いていけなかったがこのお侍様の名前は気になった。

「その前に、What your name?おまえの名前は?」
です」
「OK,、俺は―」

そこでお侍様は言葉を切り城のほうを見た。どうしたのかと見ていたらお侍様はこっちを見てばれちまった、と呟き私に団子代を渡した。

「sorry, See you again!」

そう意味のわからない言葉を残してお侍様は走って行ってしまった。その数分後に馬に乗った顔に傷のあるお侍様がやってきた。

「すまない、眼帯を右目につけたお方を知らないか」
「あ、先ほどお茶を飲まれてから走って行ってしまいました」

やられた!と馬のお侍様が呟いた。探しているみたいだ。ってことはあの眼帯のお侍様って結構凄い人?

「あ、のー・・・」
「何だ?」
「その眼帯のお侍様って・・・」
「あのお方はここ奥州をおさめる奥州筆頭伊達政宗様だ」
「伊達政宗様・・・」

それでは、と言って馬のお侍様は行ってしまった。え、伊達政宗?!伊達政宗様って、えええ!




Escape



(お忍び、ってやつだったの?!)