「小十郎さん」 「・・・」 「シカトですか!」 なんてことない一日 暇で暇でしょうがなかった私は城の中をひたすらてくてくと歩いていた。さっきまでは廊下をどたばたと走っていたのだがそれが運悪く政宗さんの執務室の前でとても怒られた。(正座させられた。未だに痛い、足に木目の痕が・・・)竜というより鬼だ、青鬼。こんなこと政宗さんに言ったら殺されるから言わないけど。綱元さんが政宗さんを宥めてくれて助かった!と思い走って逃げようとしたら政宗さんのドスの効いた声で次走ったら二度と走れなくしてやると言われたので青ざめたまま静々と逃げた。(青鬼!!) 私はまだこの城に拾われて少ししか経っていない+極度の方向音痴の為、行動範囲が狭い。とても狭い。というか青葉城が広すぎる。入り組んでるし困ってる時に限って人に会わないのだ。(何度迷子になったか。)私はまだ城下に行った事がない為、勝手に行こうと思い脱走しようとすると必ず止められる。(だっていきたいんだもん!)前は成実さんに「ちゃんダメだよー」と言って止められ、その次に脱走を試みた時は門番さんに「様を行かせたら政宗様に殺されます!」と泣き付かれた。この前なんかとうとう政宗さんに見付かりげんこつを喰らった。(まじいたい)「、テメェ・・・」と言いながら嫌な笑いをした(青筋つき)政宗さんから逃げた。久々に全力疾走した。結局捕まったけど。(後の事は言うまでもない、よね?) 今日は政宗さんは執務室だし綱元さんが見張ってるし成実さんはさっき厩で見たから大丈夫!今日こそは城下に!!物影に隠れながら門に近づき、門番に「政宗さんが至急集まれって!」と嘘を言うと門番は「ありがとうございます様!」と言いながら走って行った。(ごめん)しかしこれで行ける!と思い鼻歌を歌いながら敷居を跨いだ瞬間肩を掴まれた。背筋がサァッとして後ろを恐る恐る見た。やば。 「小十郎さん・・・!(この人を忘れてた・・・!)」 「、此処で何してる」 「な、んにもー!いやぁ奥州は空気がおいしくてついふらふらと!あー空気美味しいなぁあー!」 「そうかてっきり俺はまた城下に行こうしているのかと」 「・・・(何故!)」 「政宗様がやることがないなら字を書く練習でもしていろと言っていたぞ」 むんずと問答無用で後ろの襟首を掴まれズルズルと引っ張られる。ちょっと待って首絞まる、首絞まるよ小十郎さん!っていうか小十郎さんを忘れてた私も私だけども何故!何故毎回捕まるのか!私に忍でもつけてんじゃないの政宗さん?!って事は私四六時中監視下にあるわけ?!何その凶悪犯罪者みたいな生活!え、お風呂とか寝顔とかバッチリなわけ?それ政宗さんに逐一報告してんの?だってそうとしか考えられない! 「お前の奇天烈な行動見る為に大事な忍を使う訳ねーだろ」 「こ、小十郎さん!まさか心が読めるのですか?!っていうか奇天烈てなんですか!」 「そんな事ある訳ねーだろ、だいたい、お前の考えている事なんざ誰でも解る」 「(思考だだもれ?!)」 「奇天烈と言っても行動も見え見えだしな」 「・・・だから皆私が城抜け出そうとしてるのわかるんだ(見え見えだから)・・・」 「分かったなら早く字の練習でもしろ!」 ポイッと放られた部屋には既に書道セットみたいな物が置いてあった。(準備良すぎだ)やるしかないのか、と筆を取り、見本を見つつ頑張った。 「頑張った結果がコレ、か」 「・・・」 あれから早い事数時間。私と小十郎さんは部屋に閉じこもり黙々と作業をしていた。私は字を書く練習。小十郎さんはお仕事。(たまに私の文字に文句言う)えーと何書体って言うんだっけ、この時代の人の書く字って・・・まぁいいか。とにかくむずい。私書道は苦手なんだよー!ってかこの時代の人達の字ってミミズがのたうちまわったような字だと思う!! 「ミミズがのたうったような字だな」 「・・・おほめにあずかりこうえいです」 にこーと笑いながら棒読みで言ってやったら鼻で笑われた。(青鬼の部下も鬼か!)(ってかミミズって言われた!憤慨!!) 「私の時代ではこんな字書かないんです!もーやめやめ!」 筆をほうり出して畳に寝転がる。ごち、と頭がぶつかったが気にしない気にしない!小十郎さんが馬鹿だなと言う目見下ろしていたから足を叩いたらでこピンされた!(結構本気のでこピンだったのでは・・・痛い・・・)あまりの痛みに涙目になって睨んだらため息をつかれた。(なんだってんだ!)けどちゃんは優しいですからね!許してあげます!! 「小十郎さーん」 「何だ」 「城下行きたい」 「無理だ」 「なーんーでーーー」 「無理だからだ」 「また脱走するからいいですけどっ!」 「また捕まるだろ」 「・・・成実さんと行くもん」 「あいつも止めるだろうが」 「成実さんは行きたいって頭下げたら連れてってくれると思うの!梵には内緒ね !って!」 「」 「はい?」 「あまり変な事はしない方が良いと思うが」 「え?」 「二度と外に出られなくさせられるぞ」 「・・・」 やばい凄い想像できる。というか、やる。政宗さんならやりかねない。・・・あーあやっぱり城下には行けないのかなぁー。だって城下の賑やかさとかが城まで聞こえてきて凄い行きたいんだもん! 「なんでダメなのかなー」 「迷子なると思われてんだろ」 「・・・」 否定できない。そんなことないですよ〜と笑いながら言い返したいけどそれすら憚られる程の方向音痴なのだ。私は。この前なんか朝、顔を洗いに井戸に行こうと思い部屋を出たはいいけど早速迷った。現代から持ってきていたタオルを持って井戸をひたすら探していた。井戸の場所を教えてもらった時ちゃんと覚えていなかったんだよね・・・。周りをキョロキョロしてたからさぁ・・・。(だって珍しいんだもん!お城って!!)結局井戸は見つからなくて、けれど困ったことに部屋への帰り道も分からなくなった私は涙目になりながら広い場内を歩き回っていた。ら、どうやら朝餉の時間に来ない私を皆で探してくれていたらしく私はもれなく政宗さんに見つかった。あの時はホントに助かった!と思った。(勿論政宗さんにも小十郎さんにもめちゃ怒られた)それからだ。一人で外を出歩くと直ぐに人に見つかるようになったのは。(流石に城内は慣れた) 「ちぇー・・・」 「政宗様が連れていってくれるだろ、そのうち」 「そのうち・・・来年かなー再来年かなー」 「気長に待ちな」 「つか政宗さんじゃなくてもいいじゃん!小十郎さん連れてってよ!」 「お前政宗様に殺されるぞ」 「(えぇ?!)」 なんでだ!っていうかお腹減ったなー・・・。なんか食べたい。 「小十郎さんお腹減りませんー?」 「減らねぇ」 「少食!う〜・・・あ、小十郎さんの畑行ってなんかむしりにいきましょーよ!」 「むしるとか言うんじゃねぇ!!それに刈り入れは終わった!」 「ちえーー!・・・政宗さんとこ行こう!お菓子あるはず!」 「テメェ!政宗様の邪魔をするんじゃねぇ!!」 「もー終わってますよぉ!隙あり!!」 小十郎さんをかい潜って私は政宗さんのいる執務室に走った。(後ろからテメェ!三枚におろすぞ!と脅迫的な言葉が聞こえたけど私は止まりませーん聞こえませーん!)政宗さーーん!お菓子くださーい!!と心の中で叫んで(流石に空気読むよ!)部屋に近づいたら襖が勢いよく開いた。ナイスタイミング!と思ったらなんと中から出てきたのは政宗さんだった。しかも目を細めてこちらを見ている。怖い。迫力がはんぱない・・・。この人は間違いなく目で人を殺せるよ。いろんな意味で! 「Hey,、この前なんて言ったか忘れたか?」 「こ、この前?!(目が怖い・・・!)」 「次走ったら・・・」 「走ったら・・・・・・あ!!」 「思い出したようだな?さて、準備はいいか?Are you ok?」 「ノッ、ノォォオオ!!」 |