「水谷ー!」
「うわっ!」


部活にそろそろ行かないと阿部と花井に怒られる、と思って教室の席を立った、
とたんバン!と凄い勢いで教室のドア開いた。
そこにはすさまじい形相をしたクラスメートの


「みーずーたーにぃい〜!!」


ずんずんと俺の方に歩いてきて手を上に振りかぶった。
殴られる!
そう思った俺は咄嗟に両手で顔を隠す。
けど痛みはいつまでたってもないからそろそろと目を開けて目の前に立つを見た。
そしたらの振りかぶっていた手は俺の目の前に突き出されていた。


「えー、と、どう、したの?」


恐る恐るに聞いてみた。
なんだか三橋みたいな喋り方になった気がする。


「ハイ!」


て言ってまた手をグッと俺に向かって突き出した。
顔をみるとにっこり笑っていた。


「え、」
「もー!あげる!ホラッ」


俺の手を掴んで自分の持っていた物を俺の手に握らせた。
が一歩後ろに退いたから俺は手に握らされたなにかを見た。


「これ、」
「水谷部活頑張ってるからさし入れ!」


手の中にあったのはチロルチョコ。
ずっと握ってきたからかちょっと溶けていた。


「ありがとー」
「いいえ!水谷頑張ってね」
「うん」
「もう阿部にクソレって言われないよーにね」
「え、なんでそれ知ってんの!?」
「阿部が教えてくれた」
「そーなんだアハハー!(阿部の馬鹿ー!)」
「でも野球やってる水谷カッコイイよ」
「え?」
「じ、じゃあね!」


いきなりはクルッとドアに引き返して出て行った。
行っちゃった、とドアを見ていたら顔をうっすら染めたが顔を覗かせた。


「夏大終わったら・・・言いたい事ある!」
「何?」
「夏大終わったらだよ!だから、頑張って!!応援しにいくからっ!」


じゃあまた明日!と叫んでは今度こそ出て行った。
手の中にのこされた溶けかけたチョコを見る。


「夏大終わったら・・・言いたい事ある!」


期待しても、いいんだろうか。






(溶けたチョコはビターあじ)