「好きです付き合ってください」 なんて言えたら、どれだけ救われるんだろう 「え、準太くん帰るの?」 「うん、今日は疲れたから帰る」 今日はミーティングだけの日で、このあと自主練だった。 自主練なんだから帰るのは自由。 そうなんだけど準太くんは残って練習していくものだと思っていたからびっくりしてしまった。 準太くんはいつだって自主練に出ていたから余計にびっくりだ。 「お弁当持ってきたって言ってたのに」 「まあ、しょうがない、今日は凄い疲れたんだよ」 苦笑いしながら言って準太くんは帰って行った。 だんだん小さくなっていく背中に向かってさようなら、と呟いた。 見送ってから部室に帰って利央の隣に座る。 「あれ、準サンはァ?」 「帰っちゃった」 ふーん帰っちゃったんだァと言う利央に 「何か用事でもあるのかなあ」 と聞いてみた。 「うーん、デートとか?」 「デート・・・」 やっぱりデートなのかな、なんて一度思い込むとデート、という単語が頭から離れない。 「センパイー?大丈夫スかァ?」 目の前でひらひらと手を振られて我にかえる。 「ごめん・・・準太くん、やっぱりデートなのかなあ・・・」 「ま、まさかァ大丈夫ですよ!」 「・・・」 「・・・」 利央くんにまで気遣わせてしまった。ごめん利央くん、でも不安なんだ。 嘘でもいいから、誰でもいいから否定して欲しいんだ。 そんなわけない、って。 安心したいんだ、そんなわけないよね、って。 そうであってもそうじゃないと信じたいんだよ。 「お前今日部活行かねーの?」 「いくよ、でも日誌届けなきゃだからちょっと遅れる」 「そっか、じゃあ後でな」 一緒に教室から廊下に出て私は職員室へ、準太くんは部室へ向かうために途中で別れた。 途中で後ろを振り返るとまだ準太くんが見えていた。 そういえば昨日もこんな風に準太くんを見送ったなぁ。 だんだん小さくなっていく背中にさようなら、って呟いたんだよね。 本当はあの大きな背中と並んで歩きたい。 けどそれが叶うとは思ってはいないから。 この焦がれる程の想いをあの人に伝える勇気なんてひとさじも持ち合わせていない私は、 あの背中に向かって呟くことしかできない。 こんなことでは想いが届くことはないと知っていながら。 あの恋い焦がれる、大きな背中に、つぶやくしか、 |