今日は久しぶりに部活が休みだと言った準太の家に遊びに来ている。 準太の部屋に入るのは何回目だろう。 とりあえず片手で数えるぐらいしかきたことはない。 というか、最後にデートしたのは一体いつだったっけ?もう記憶が忘却の彼方だ。 キスも一回だけ。それもいつの事だったか。 案外淡泊な自分にため息をついた。 (だって普通彼氏との初キスって覚えてたりするんじゃないのか)(こんな事思うのは少女漫画の読みすぎ?) ふー、とため息をついたら前に座っていた準太が顔を上げた。 「深いな、ため息」 「そお?」 「幸せ逃げんぞー」 「もう大分逃げてったよ」 準太とこうやって話したりすることが私の幸せだ。 デートとかもっとしたいけど準太はバリバリ厳しい名門野球部、しかもエース。 野球をしている準太の目はとても真剣で見るたびに惚れ直してしまう。それくらい素敵。 けれどその野球のおかげでほぼ休日返上。 夏が近い今、幸せな準太との時間が減っていっている。 それなら、これ以上幸せが逃げないように、と口をむぐ、とつむんだ。 「何やってんだ、は」 「え、いや、何も?」 「ふーん?」 準太は私を不思議そうな顔で見つめた後読んでいた野球雑誌にまた目を落とした。 あーカッコイイなあ、惚れ惚れするよ、本当。 こんなかっこよかったらそりゃモテるよね。 ファン多いもんね、準太。 そんな多くの女の子達を差し置いて私は準太と付き合ってるんだから、 付き合えてるだけ凄い幸せ者。 だから、それだけでもう幸せなんだから、これ以上幸せを望んじゃダメだ。 一緒に街を歩いてみたいとか、手を繋ぎたいとか、抱きしめたりとか、キスしたりとか。 だいたいキスは一回したし、幸せ過ぎるよ、私。 「おい、、」 「ぅ、え?」 「何、百面相してんだよ」 「え、そんな顔してた?」 「すっげー表情ころころ変わってた、しかも眉間に皺、寄りすぎ」 「うそー・・・皺・・・」 「ホントホント」 準太は手を伸ばして私の大好きな笑顔で私の眉間をスッと撫でた。 「ちょ、準太!」 「なーに赤くなってんだよ」 「っ、馬鹿準太!」 「かわいーなあは」 ぞわりとした。 その瞬間頬が熱くなる。 今絶対、私顔真っ赤だ。 「じ、準太がそんな事言うなんて思わなかった・・・」 「なんで」 「だって恥ずかしがって言わなさそうと思ってた・・・」 「恥ずかしいけど」 嘘、そう私は呟いて俯けていた顔を上げた。 準太はてっきり野球雑誌を読んでいると思っていた。 けれど顔を上げた私と準太の視線が絡んだ。 「じゅ、」 「俺はの事好きだから」 突然の告白に頭が真っ白になった。 「が言ってほしいなら何回でもかわいい、っていってやるし、好きだ、って言ってやるから」 「恥ずかしいとか、関係ないんだよ」 準太の大きくて少しごつごつした手が私の頬に触れる。 「いわなくて、いいよ」 私の手も準太の手に重ねた。 「何回も言わなくてもわかってるから」 「、」 「大好きだよ、準太」 「俺も」 ゆっくり準太の顔が近付いてくる。 私もゆっくり目を閉じた。 |