さんはどうして土方さんが好きなんですかィ?」


ある日の暖かい午後、沖田さんはいつものように店に来て店先にある長椅子に座った。団子と茶ァ頼みまさァ、と言われお待たせしましたーと持って行って団子とお茶を渡した時にさらりと聞かれたのだけどあまりにさらりと聞いてきたので一瞬何を言われたのか分からなかった。(まるで今日の天気を聞いてきたかのようにさらりと)


「沖田さん今仕事中なんです、忙しいんです」
「俺以外に客なんざいねーだろィ、ほら座った座った」


無理矢理隣に座らされ、沖田さんは何食わぬ顔で団子を頬張った。客が来ないのは沖田さんがいるから、なんて沖田さんはわかっている。いつもは店奥の影の席に座るからだ。なのに今日は店先に座るなんて。わかってやっているのだから沖
田さんは意地が悪い。


「で?なんで好きなんですかィあんなヤローを」
「おっ沖田さんもうちょっと声落として下さいよ!」
「誰も聞いちゃいやしませんよ、あんたの惚気話なんか」
「(じゃあ聞かなきゃいいじゃないの・・・!)」


ああ厄介な人に捕まった。助けを求めるにも誰も店に近付いてこない。(沖田さんの思惑は当たった訳ね)


「さっさと白状した方が身の為だぜィ」
「一般市民に脅しですか!だからチンピラ警察とか言われてるんですよ」
「ほら、3秒待ってやりまさァ」
「(しかと!)」
「さーん、にーいち、ハイ、公務執行妨害で逮捕〜」
「3秒が物凄い勢いで経ちましたけど!っていうか妨害なんかしてませんよ!」
「そんな熱くならないで下さいよ、ジャパニーズジョークでさァ」
「・・・」
「しっかし、あんなマヨ男を好きになるたァ、もしかしてさん、目マヨネーズで覆われてんじゃねーですか?」
「失礼な!視力はいいんですよ私!」
「人ってわかんねーもんだなァ」
「(またしかと・・・!)」
「どうです、あんなヤローじゃなくて俺にしときやせん?」
「心の底から遠慮致します」
「あらら、つれねーなァ、じゃあそろそろマヨ男がきそうなんで俺は此処で」
「またサボってたんですか沖田さん」
「心外だ、見回りと言って下せェよ、自主的な見回りってね」


そう言って沖田さんは人込みに紛れて去って行った後、お代と皿、湯呑みを片付けていたら沖田さんの言った通り土方さんが現れた。


「今日もお一人ですか」
「また途中でいなくなりやがった」
「沖田さんは自主的な見回り中なんですよ」
「あァ?」
「だから怒っちゃダメですよ」
「言い方変えたらサボりだろーがよォオ!!」


青筋を立てて土方さんはいつものように怒っていた。血管切れないのかな・・・。それに不本意ながら私は沖田さんを庇っておく。沖田さんは私が土方さんを好いている事を知っているのだから余計な事を土方さんに言わさないように。好きな事がばれたらきっと土方さんは店に来なくなるし喋る事が出来なくなる。それだけは阻止しなくては。


「今日はお団子は?」
「今日はやめとく、総悟を連れて帰らねェと会議が始めらんねェ」
「そうですか、それじゃあまた」
「わりーな」



メープルシロップみたいに甘くないけど



(また明日も会えますように)