た
「あ、近藤さん」
「ちゃん!久しぶりだなぁ!」
店に必要な物を大江戸スーパーに買いに行った帰り道、バッタリと近藤さんと出会った。
「お久しぶりです。仕事忙しいみたいですね」
「全くだ、おかげでちゃんの団子を食べに行く事すらできないよ」
ため息を付きながら肩を落とした近藤さんがなんだか面白くて私はくつくつと笑った。見かけによらず、可愛い人だと私はひそかに思っている。
「いつでもいらして下さいね、待ってますから」
「ああ、ありがとう」
そう言ってニコリと笑った近藤さんはホントに可愛い、いい人だと思う。この人が何故モテないのかわからない。
「あ、ちゃん」
「はい?」
「トシ、見なかった?」
思ってもみなかった名前に驚いたが何とか表情には出さないようにした。土方さんが捜されているなんて珍しい。てっきりまた沖田さんを捜しているのかと思った。
「いえ、見てないです」
「そうか・・・どこ行ったんだろうなぁトシの奴・・・」
「あの、どうかしたんですか?」
「いやな、とっつぁんがトシに見合いの話を持ってきたんだが」
見合い。その一言が頭の中を支配した。近藤さんの話が頭の中に入って来ない。見合い。土方さんがお見合い。
「じゃあ、買い物の邪魔してごめん、また食べに行くからさ!」
近藤さんはそう言って屯所とは反対方向に進んで行った。きっと土方さんを捜しに行くんだろうな。私は店への帰り道をゆっくり歩いた。頭の中はぐるぐるぐるぐる渦巻いている。お見合いお見合い土方さんが、土方さんがお見合い。そりゃあ土方さんはカッコイイし幕府に仕える警察の副長さんなんだからいいとこのお嬢さんがお相手なんだろう。きっと引く手数多なんだろうなあ。私なんて、私なんて、
ただ好きなだけなのに
「諦めるしか、ないのかな」